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2024.12.04

子宮頸がんワクチンは安全なの?|東京・性病検査・安い|銀座ヒカリクリニック

1子宮頸がんワクチンとは

子宮頚がんとは

子宮(しきゅう)は女性の生殖器(せいしょくき)である膣(ちつ)から連続する臓器で、体部(たいぶ)と頸部(けいぶ、首)に分かれます。子宮頸部にがんができる事を「子宮頸がん(しきゅうけいがん)」と呼び、世界で女性の4番目に多いがんとされています。世界では年間60万人、日本でも年間11,000人の人が子宮頸がんに感染し、世界、日本でそれぞれ年間34万人、3,000人が亡くなる、とても悪い病気です。

ママになったばかりの20歳代、30歳代の若い女性が死に至る病気なので、「マザーキラー」とも呼ばれています。

1-2子宮頸がんの原因

子宮頸がんの原因はヒト・パピローマ・ウイルス(以下、HPV)による感染で、それは性行為をする事によりうつる性感染症(せいかんせんしょう、性病のこと)の1つです。性行為をきっかけとしてうつったHPVが原因となり、がんを発症し、がんが浸潤、多臓器に転移していくと致命的となります。

1-3子宮頚がんはワクチンで予防できる

子宮頸がんはHPVの感染によりうつり、発症するので、HPVに感染しないようにすればがんは予防できます。でもセックスは、生命の営みの1つであり、止める事はできません。コンドームで防ぐことも大切ですが、妊活の際にはそうもいきません。そのため、HPVの感染の広がりを最も効率的かつ効果的に防ぐにはHPVワクチンによる予防が有用です。

子宮頸がん予防のポイント

  • “セックスは止められない”
  • 子宮頸がんはHPVワクチンで予防できる

1-4HPVワクチンとは

HPVに対するワクチンで、HPV 関連がんと呼ばれる、子宮頸がん、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がん、がんではありませんが良性腫瘍の尖圭コンジローマなどを防ぐことができます。子宮頸がんが最も罹患率・死亡率が高い為、分かり易く子宮頸がんワクチンとも呼ばれていますが、HPV関連がんのすべてに対して予防効果があるため、正しくはHPVワクチンと言います

1-5HPVワクチンの種類

HPVは200種類もある!?

HPVには約200種類のがあり、全て番号で表現されています。
その中でもがんに関連するHPVは、「HPV高リスク型」と呼ばれ、尖圭コンジローマの原因となるものは「低リスク型」と言います。

HPV高リスク型…子宮頸がんの原因

  • 16/18/31/33/45/52/58型

HPV低リスク型…尖圭コンジローマの原因

  • 6/11型
ワクチンは3種類ある

これらのうち、一番顔つきの悪い16型、18型をカバーするワクチンを2価ワクチン(サーバリックス®)6型、11型、16型、18型をカバーするワクチンを4価ワクチン(ガーダシル®)、9つ全ての型をカバーするワクチンを9価ワクチン(シルガード®)と言います。

2いろいろあった社会問題をまとめると

時系列、接種率

日本では、2009年に2価ワクチンが承認され、国や自治体による無料接種が始まりました。
2011年に4価ワクチンが承認され、2013年3月には定期接種化が決定しました。そして接種率が一気に高まりました(接種率:72%)が、その3か月後の6月には「ワクチン接種後に様々な副作用」が報告され(のちに、ワクチンとは無関係と結論付けられます)、国は積極的勧奨を中止しました。
2013年~2021年では、接種率は4.6%まで低下しましたが、2018年に、「薬害ではなかった(ワクチン接種後の様々な症状はワクチンとは無関係であった)」という論文(通称、名古屋スタディ)が発表され、徐々に現場の医師たちによる個別勧奨が再開しました。そして、2022年に国が接種再勧奨とキャッチアップ制度をはじめ、現在では接種率は43%にまで増加しました。

各国の接種率まとめ

各国の接種率は以下です。

世界各国のHPVワクチン接種率(2019年)

  • 95%:メキシコ
  • 80-89%:カナダ、イギリス、マルタ、ポルトガル、スウェーデン
  • 70-79%:オーストラリア、スペインハンガリー
  • 60-69%:ブラジル、アイルランド、ベルギーリトアニア、キプロス、デンマーク、フィンランド
  • 50-59%:スロベニア、アルゼンチン、南アフリカ、ラトビア、オランダ、韓国
  • 40-49%:エストニア、イタリア
  • 30-39%:アメリカ、ドイツ、
  • 30%未満:フランス、ルクセンブルク、ブルガリア、インドネシア、日本

3ワクチンの効果について

日本と世界各国でのHPVワクチンの効果について

HPVワクチンの効果

  • 日本:ワクチン接種によりHPV16,18型は激減、HPV31,58型感染も減少。細胞診断による前がん病変の発生は皆無で、HPV16,18型関連CIN2/3発生は100%防止された。
  • ヨーロッパ:12-13歳、16歳へのHPVワクチン接種で86-89%子宮頸がんの発生は防止された。
  • 米国:肛門管がん減少(2022年報告)、男性への4価ワクチン接種により女性のHPV感染が減少した(2021年報告)。

4HPV感染が男性へ与える影響について

低リスク型

女性と同様で、尖圭コンジローマの原因になっています。国立感染症研究所のデータによると、現在、男性のHPV感染者は増加傾向にあります。

高リスク型

高リスク型では、以下について報告があります。

高リスク型HPV感染が男性に与える影響

  • 陰茎がん、肛門がん、咽頭がんのリスクを上昇させる
  • 調査された精液サンプルのうち19%にHPV感染が確認された。高リスク型感染者では、低リスク型感染者や対象と比べて精子の壊死が多かった
  • 精液の質の低下はなかった。

5男性がHPVワクチンを接種する意義

以下、まとめます。

男性がHPVワクチン接種をする意義

  • 尖圭コンジローマ陰茎がん、肛門がん、咽頭がんリスクを下げる
  • 女性の子宮頸がんのリスクを下げる
  • 精子の壊死のリスクを下げる可能性がある。

6HPV感染後でもワクチンは無駄ではない!?

1つの論文をご紹介いたします。
結論から申し上げると、ワクチンを接種した場合には、しなかった場合より、処女であればほぼ100%に近い確率で子宮頸がん、膣・外陰部のがんの前がん病変(がんになる前の顔つきの悪い組織の事、異形成(いけいせい)という)発症のリスクが軽減した事、処女でなく、HPVに感染していたり、すでに異形成やコンジローマを発症した人も含む場合でも、50―85%再発を防げた(尖圭コンジいろーまは79.5%)ことが結論付けられています。

詳しく解説

16-26歳女性で、(1)未感染者の集団と、(2)HPV感染者,有病者などを含む一般集団とで、ワクチン接種後に3.5~4年の追跡でどの程度、ワクチン群とプラセボ群(ワクチンではない、効果のない偽薬を接種した群)との結果、感染率と予防率が以下である。

(1)未感染者(処女)集団における病気の発症数/母数、予防効果の表

病気 ワクチン群 vs プラセボ群、予防効果

子宮頸部異形成
軽度~中等度
上皮内癌

2/7864 vs 110/7865, 98.2%

膣:異形成

0/7900 vs 13/7902, 100%

外陰部:異形成

0/7900 vs 10/7902, 100%

尖圭コンジローマ

5/4689 vs 140/4735, 96.4%

(2)HPV感染者,有病者などを含む一般集団における病気の発症数/母数、予防効果の表

病気 ワクチン群 vs プラセボ群、予防効果

子宮頸部異形成
軽度~中等度
上皮内癌

142/8823 vs 293/8860, 51.5%

膣:異形成

8/8956 vs 30/8969, 73.3%

外陰部:異形成

2/8956 vs 14/8969, 85.7%

尖圭コンジローマ

63/8689 vs 305/8702, 79.5%

朗報

尖圭コンジローマと戦う私たちにとって朗報なのは、HPVにすでに感染していたり、コンジローマを発症しても、ワクチンを接種することがその後の再発を79.5%もコントロールできるのはとても素晴らしい予防効果ですね。

7私たちが戦っている尖圭コンジローマという病気

なぜ私たちが口を酸っぱく「HPVワクチンを接種したほうが良い」というのかというと、それはひとえに当院に通院される患者様の中で、尖圭コンジローマという性感染症で悩む患者様が非常に多くいらっしゃる事に尽きます。最後に尖圭コンジローマについて詳しくまとめていきます。

7-1尖圭コンジローマとは

尖圭コンジローマ(せんけいこんじろーま)は、性行為によりうつったHPV(ヒト・パピローマ・ウイルス)感染を原因とする性感染症です。当院ではこれまでに15歳~74歳までの患者様がいらっしゃいましたが、その多くは20-30歳代女性、20-50歳代男性です。膣性交、口腔性交、肛門性交、指入れなどを契機にひとたびウイルスが感染すると平均2.8か月(3週間~8か月)の潜伏期間を経て性器に鶏のトサカのようなイボができてきます。色は肌色、白、黒、赤などがあり、男性では亀頭、冠状溝、包皮、陰茎体部、陰茎基部、恥毛部、尿道、陰嚢、肛門周囲などに、女性では大陰唇、小陰唇、膣前庭部、膣口、尿道、処女膜、クリトリス周囲、会陰部、肛門周囲、膣壁、子宮頚管部などにできます。粘膜近くにできたイボは若干治りやすく、皮膚にできた乾いたイボは治りにくい傾向にあります。

尖圭コンジローマまとめ

  • 原因ウイルス:HPV
  • 好発年齢、性別:20-30歳代女性、20-50歳代男性
  • 潜伏期間:2.8か月
  • 男性好発部位:亀頭、冠状溝、包皮、陰茎体部、陰茎基部、恥毛部、尿道、陰嚢、肛門周囲など
  • 女性好発部位:大陰唇、小陰唇、膣前庭部、膣口、尿道、処女膜、クリトリス周囲、会陰部、肛門周囲、膣壁、子宮頚管部など
7-2診断

多くの場合、視診で診断が付きますが、わかりにくい場合や患部が小さい場合にはHPV低リスク群の検査を提出事もできます。当院では病理検査は実施していません。その理由は病理検査においても白か黒かわからない紛らわしいものもあるためです。必ずしも全ての診断の根拠を病理検査ですべきでない、とガイドラインにも記載がなされています。総合的な判断が求められます。

7-3紛らわしいイボの存在

尖圭コンジローマに似たイボで、同じ性病の伝染性軟属腫(水いぼ)正常構造としてのフォアダイス、真珠様陰茎丘疹症、膣前庭乳頭腫症、タイソン腺などは、コンジローマの診断をさらに難しくします。

尖圭コンジローマに似た別のイボ

7-4他の病気との合併で起こる

HIV感染者、梅毒感染者、性器ヘルペス患者、亀頭包皮炎の方、アトピー性皮膚炎の方、糖尿病の方、他の性感染症などと非常によく合併します。混合感染の多い病気です。また前述の通り、女性は自分の性器がほぼ見えませんから、おりもの検査や淋菌・クラミジアの治癒検査等をしている時に偶然見つかることもあります。男性では肥満の方で自分で気づけていない人や長い間皮を剥いておらず、気づけていない人がいます。

7-5治療

治療は、外科的治療と内科的治療に分かれ、外科的治療には切除、レーザー、電気メスによる焼灼術など、内科的治療には、ベセルナクリーム、ヨクイニン漢方、液体窒素による凍結療法などがあります。当院では基本的には内科的治療を行い、難治性の場合は更に5FU軟膏、ブレオマイシン軟膏、海外で用いられベセルナよりも効果的であると報告のあるポドフィリン溶液などを使用します。どうしても治らなかったコンジローマが薬を変えることで一発で治ったという経験もとても多くあります。また病変が大きい場合には電気メスによる焼灼術を勧める事もあります。

7-6地道な治療が大切

治療効果や治療期間については個人差がとてもあります。例えば1週間で治る人もいれば、再発などを繰り返してなんだかんだ1年以上治療しているという人もいます。平均的には1,2ヶ月で完治します。また、早く治れば済む、という単純なお話でもありません。例えば、手術やレーザー等で一度で完全に取りきれたと思っても翌週にすぐに再発する事はよくあります。
その意味で、外科的切除よりも内科的治療の方が優れていると考える事もできます。例えばベセルナは皮膚局所の免疫を活性化させて(賦活化(ふかつか)といいます)自分の免疫で倒していきますし、ヨクイニンはウイルス性のイボに良く聞くことが知られており、毎日6錠×3回を地道に3,4か月飲み続けると徐々に効いてきます。また、液体窒素による凍結療法も一筋縄ではいかず、毎週地道にイボを焼いていくことで、体の中で抗体を作りながらゆっくりと自分の免疫も活性化されていきながら完治していくと言われています。

7-7免疫との関係

免疫抑制状態の患者さんでは、尖圭コンジローマの発症、難治化はよく知られています。AIDS、移植後、免疫抑制剤(最近では抗体製剤など)の患者さんで尖圭コンジローマが発症した、治りが悪かったという報告は頻繁に見られます。

7-8患者さんが抱える恐怖、不安感、焦燥感、後悔

患者さんはさまざまな恐怖心、不安感、焦燥感、後悔を抱えます。例えば女性では自分の性器が見えない事による恐怖心、不安感があります。本当に自分の性器にコンジローマがあるのか、あるいはないのか、またあるとして治療をしてみて担当の先生から「小さくなっていますよ」と言われても「なかなか小さくならない」と言われても見れないので心配です。そして再発の不安も常にあります。男性で多い心配は尿道にできたら窒素の治療が痛いのか、とか包茎の場合に包皮と亀頭を行ったり来たり自己感染してイボが再発する恐怖、不安があります。イボがペニスを一周してしまう事もあります。

また結婚を希望する人にとっても相手に伝えられないつらい気持ちや、早く妊活がしたいとか、風俗で働かないとお金がないという焦る気持ちもあります。

7-9症例集

これまでに本当に多くの患者さんにとって尖圭コンジローマは残酷にも人々の心を乱してきました。最後にその症例集を見てみましょう。これらの症例の1つ1つが本当に大変です。それゆえに私たちは、「いつか尖圭コンジローマがゼロになる時代」を実現したいと考えており、HPVワクチンの普及を切に願っているのです。

尖圭コンジローマの実際の症例

8私たちの結論

私たちが日ごろ診察している患者さんは、特殊な人たちではありません。昨日までは何の問題もなく普通の生活をしていた人たちです。ある時、急に性器にイボができ、増えて大きくなって、おかしいと感じてスマホでググって、性病と知って失望して、治療が効かなかったり、効いても再発したりして前述のように恐怖、不安、焦燥感、後悔などを感じています。そのような方を一人でも減らしたい、その思いで私たちは仕事をしています。
HPVワクチンが浸透し、男女で高い接種率が実現すればその5-15年ほどでほとんどの尖圭コンジローマの患者はいなくなる可能性があります。そのような日を私たちは夢見て仕事をしているのです。

参考文献

1.MSDのHP
2.Suzuki, Sadao, and Akihiro Hosono. “No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: results of the Nagoya study.” Papillomavirus Research 5 (2018): 96-103.
3.川名敬. “HPV ワクチン.” ウイルス 62.1 (2012): 79-86.

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記事監修

院長 剣木憲文(けんのき のりふみ)

医師、医学博士
日本性感染症学会認定医
銀座ヒカリクリニック院長

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