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2024.11.14

【素朴な疑問にお答え!】性感染症は自然に治るの?|専門医監修|東京・性病検査|銀座ヒカリクリニック

1はじめに

小難しい性病の分野をスカッと斬ります!!性感染症内科医のノリです。「性病は自然に治る?」と題してお話していきます。先に答えから言うと、「治らない!」です。考えてみたらわかると思いますが、そんな簡単に治ってしまうのであれば私たちの仕事はなくなってしまいます。 でも風邪で病院に行く人はいるけれど、風邪は病院に行かなくても治りますよね。「薬を飲まないと、苦しいけど治る」そういう性病もあります。それでは詳しくみていきましょう。

 2「自然に」治る性病と「自然に」治らない性病を分けてみる

自然に治る性病と自然に治らない性病を分けてみると次のようになります。

自然に治る事がある性病 自然に治らない性病

・性感染症関連疾患(膣カンジダ症、一般細菌による細菌性膣症、亀頭包皮炎)
・アデノウイルスによる尿道炎
・性器ヘルペスの症状(症状が治るという意味)

・梅毒
・淋菌
・クラミジア
・マイコプラズマ・ウレアプラズマ
・トリコモナス
・赤痢アメーバ
・ケジラミ(剃毛だけで治る事はある)
・HIV
・尖圭コンジローマ
・伝染性軟属腫
・性器ヘルペス(ウイルスが排除されないという意味)

このようにほとんどの性感染症は自然には治りません。一方で、自然に治る性病はなぜ自然に治るのか、1つずつ考えてみましょう。

 3なぜ「自然に」治る事があるのか

3-1カンジダ・一般細菌による性感染症関連疾患は「自然に」治る事がある

まず、カンジダ・一般細菌による感染症というのは、性感染症関連疾患と言って、通常の性感染症(性病)とは分けて考える事が大切です。

 3-2性感染症関連疾患とは?

性感染症関連疾患とは、必ずしも性行為をしなくても発症しうる性器の感染症です。 

性感染症関連疾患の一覧

  • 女性:膣カンジダ症、細菌性膣症
  • 男性:カンジダ性亀頭包皮炎、非特異的亀頭包皮炎(一般細菌による)

女性の膣や男性皮膚というのは、外界と接している為、当然無菌状態ではありません。(*一方、皮膚の皮の下(皮下組織)やお腹の中(腹腔)、胸の中(胸腔)は無菌状態です。)つまり、カンジダや一般細菌などは膣や男性ペニスの皮膚にもともと「いくらか」いるものです。

 ここで、「いくらか」というのがポイントで、少量であれば悪さはしません。女性であれば、ある体調の悪い時などに、膣の状況も悪化し、もともとは少量だった菌が増加したタイミングでカンジダ症や細菌性膣症が発症します。細菌性膣症が発症するきっかけやメカニズムについては人気のコラムをご参照ください。

人気のコラム

男性も同様で、洗いすぎたり、摩擦などが原因で皮膚のバリアが弱まってしまった時に菌は増殖し、「悪さ」をして、亀頭包皮炎になるのです。

3-3膣カンジダ症、細菌性膣症、亀頭包皮炎は治療しなくても「自然に」治る事がある?

これらの性感染症関連疾患は、「治療しなくても治る事がある」でしょう。女性は体調が整えば、膣の自浄作用が高まり、菌の量は減っていきますし、男性も皮膚のバリアが戻ればまたよくなります。なぜ、自然に治り得るこれらの疾患で、多くの患者さんは医療機関を受診するのでしょうか。

3-4性感染症関連疾患でクリニックを訪れる人は多い

その理由はひとえに、これらの疾患は症状が重たいからです。

3-5性感染症関連疾患は風邪に似ている!?

私たちはこれらの性感染症関連疾患は風邪に似ていると常より考えたりしています。風邪は自然にも治るけれど、病気の中でも群を抜いて「しんどい」ですよね。

3-6性感染症関連疾患はどのようにつらい!?

性感染症関連疾患の症状は本当に重たいです。それぞれ一覧にしてまとめてみましょう。

性感染症関連疾患の典型的な症状一覧

  • 【膣カンジダ症】膣内が我慢できないほどの痒みであり掻きむしりたい衝動に駆られてしまう。
  • 【細菌性膣症】膣内がとてつもなくひどい悪臭で、服を着ていてもそれが気になり人との距離を置こうとしてしまう。
  • 【亀頭包皮炎】亀頭や包皮が赤く腫れぼったく、白いカスが出て、少しニキビのような細かい膿疱が見られる。亀裂も入っていて、痒みや痛みもあって不快である。

3-7性感染症関連疾患の治療とは?

女性であれば、膣洗浄、膣錠、軟膏などが処方されます。しっかりと治療を行えば不快感は数日で改善し、何事もなかったのかのように生活が送れます。男性では、軟膏を塗って様子を見ていくことで、症状は1週間以内にはピタッとなくなります。

*ただし、糖尿病の方、糖尿病のお薬を使用している方、アトピー性皮膚炎のある方、免疫抑制剤を使用している方に関しては、症状が少し長引くこともあります。

4他には「自然に」治るものにはどのようなものがありますか?

他には、アデノウイルスによる尿道炎や性器ヘルペスを挙げさせていただきました。

4-1アデノウイルス尿道炎はなぜ「自然に」治るのか?

アデノウイルスはのどの風邪を引き起こすウイルスですが、「強い尿道炎症状」が出る事も知られ、性感染症の1つでもあります。治療も風邪と同様で、対症療法はあっても特効薬はありません。強い症状ではあるのですが、自然に治るまで、日にち薬というものなのです。

 4-2性器ヘルペスの症状はなぜ「自然に」治るのか?

性器ヘルペスを挙げさせていただきました。表にも記載いたしましたが、自然に治るというのはあくまで症状が消失する、という意味です。性器ヘルペスは皆さまご存知の通り、一度感染してしまうと、体から排除する事は難しく、一生体に残ってしまい、人によっては性行為関係なしで疲れている時(免疫が落ちている時)などに陰部潰瘍などの症状が再発します(2回目以降は性行為は関係のない再発です)。従いまして、完治はしませんが、症状だけを抑えるという意味では自然に陰部潰瘍は治まります。

4-3性器ヘルペスは放置しても良い?

まず、「放置して良いですよ」という医師はいないと思いますが、実際どうでしょうか。性器ヘルペスは一度感染すると繰り返しの再発を来たす方もいらっしゃいます。初発と再発で分けて考えてみましょう。

4-4初発は必ずクリニックを受診する

性器ヘルペスに初めて感染した(初発)時というのは、男性も女性もまずクリニックを受診されます。その理由は初発の症状が激しいからです。

発熱、陰部潰瘍(皮膚がただれてしまう)、それだけでもぐったりしてしまいそうですが、女性ならさらに肛門周囲にも潰瘍(悪臭)ができたり、細菌性膣症や膀胱炎も同時に発症したりされる方もいらっしゃいます。

このようにとにかくひどい症状なので、クリニックを早めに受診されます。そしてこうヘルペスウイルス薬の薬飲み薬や軟膏はとても効果があります。何もしなくても2,3週間で治るとは思いますが、お薬を服用すると3,4日でほとんど症状は軽快し、1週間後のフォローアップ外来では、陰部潰瘍のほとんどは乾いて上皮化しており、本人の自覚症状はほとんど何もありません。

なぜヘルペス初発の患者さんは必ずクリニックを訪れるのか

  • 性器ヘルペスの初発は症状が重たい。例:発熱、陰部潰瘍の他、女性では細菌性膣症、膀胱炎、肛門周囲の潰瘍で悪臭(細菌感染合併)
  • 抗ウイルス薬がとても良く効き、症状の消失が2週間程早まる。

4-5再発の場合はどうか

性器ヘルペス再発の場合は初発ほどの重症感はありません。実際に、発熱する人はほとんどおられず、陰部潰瘍の数も範囲も軽度であることが多いです。よって、不快感が少ない人は再発してもクリニックを訪れない方もいらっしゃいます。それでもクリニックに来られる方というのはどのような方なのでしょうか。

4-6再発患者様がクリニックに来られる理由

理由は4つあります。

性器ヘルペス初発治療後の患者様がご来院される理由

  • 薬を飲むと改善が早い【再発処方】
  • 再発時に早く薬が飲みたい【再発3回セット】
  • そもそも再発を抑えたい【再発抑制療法】
  • 絶対に相手に移したくない【再発抑制療法】
  • 薬を飲むと改善が早い【再発処方】

    これは初発の時と同様、性器ヘルペスは陰部潰瘍ができる前に、ご本人の自覚しかないのですが「皮膚がピリピリする」感覚を持つ人がいます。薬は早く飲めば飲むほど効果的であり、その段階で飲みたいという患者様が多いです。

    再発時に早く薬が飲みたい【再発3回セット】

    これは①に通じるのですが、再発は夜中でも、日曜でも突然来ます。再発は待ってはくれません。予測ができるとしたら、例えば男性であれば深酒をしたとき、女性では生理前や生理中などの免疫の下がった時に必ず再発する、という方もいらっしゃいます。

    性器ヘルペスが再発するタイミングとは?

    • 深酒をしたとき
    • 生理中やその前後

    ですが、多くは突然のことです。突然のその時に備えて、当院では3回分をセットで処方することができます。

     そもそも再発を抑えたい【再発抑制療法】

    不幸にも、年に5,6回(2ヶ月に1回)程度再発してしまう方もいらっしゃいます。その場合は抗ヘルペス薬を毎日服用する再発抑制法という方法があります。これにより、再発を70%抑制できます。「飲んでから全く再発しなくなった」という人が多いですが、「再発しても軽症で済む」と言われる方もいらっしゃいます。

     絶対に相手に移したくない【再発抑制療法】

    再発抑制療法にはもう一つの利点があります。それは、同時に70%ほど相手に移す感染力が減少するという事です。再発はしていない人でも、妊活をする際など、相手に絶対に移したくない、と思われる方は服用しています。

     ここまでは自然に治る性病(でも処方薬を服用したほうが早く治る)についてお話してきました。後半は自然に治らない性病について、その理由とともにお話していきましょう。

    5なぜ性病は自然に治らないのか?

    性病の原因菌には、寄生虫、原虫、真菌、細菌、ウイルスなどがあるのでした。それぞれに効果的なお薬があり、基本的にはお薬を飲まないと治りません。

    性病の病原体に効く、それぞれの薬を以下に挙げてみます。

    原因菌の種類 効果的なお薬
    寄生虫 抗寄生虫薬
    原虫 抗原虫薬
    真菌 抗真菌薬
    細菌 抗生物質(抗生剤)
    ウイルス 抗ウイルス薬

    1つずつ見ていきましょう。

    5-1ケジラミ症はどのようにして治るのか

    ケジラミは陰毛に寄生する吸血昆虫です。薬がなくても、剃毛だけでも治る事が知られていますが、「自然に」は治りません。剃毛をすると、宿主の環境が変わってしまい、毛のないところでは48時間程度しか生きられないため、最終的には死滅してしまいます。また、スミシリン®シャンプーはケジラミに対してとても有用なお薬です。

    5-2トリコモナスや赤痢アメーバはどのようにして治るのか

    抗原虫薬のフラジールはとても効果的です。両者ともに感染が分かった時には速やかに服用し、完治を目指します。

    5-3カンジダはどのようにして治るのか

    前述の通りカンジダによる膣炎や亀頭包皮炎は「自然に」も治でしょう。しかし、カンジダ症や細菌性膣症、亀頭包皮炎の症状はとても強く、早く医療機関を受診して薬を処方してもらうのが良いです。例えば、カンジダの膣錠やクリームはとても良く効きます。繰り返してしまう方は特にしっかりと薬を使用して治した方が良いと考えます。

    5-4細菌性の性感染症はどのようにして治るのか

    抗生物質が出現する前(主に第二次世界大戦前)は、「ほとんどの性病」は「不治の病」でした。しかし、抗生物質の出現により「治らない性病」は「治る性病」になりました。逆に、抗生物質が効く細菌性の性病は、抗生剤がなければ自然には治らないのです。

    細菌性性感染症の一覧

    • 梅毒
    • 淋菌
    • クラミジア
    • マイコプラズマ・ウレアプラズマ

    細菌性性感染症(Bacterial STI)はとても大切な概念で、今話題となっていますドキシペップ(Doxy PEP)という性行為後の性病予防薬の投与にも関係します。ドキシペップではドキシサイクリンと呼ばれる抗生剤を性行為後に飲むことで、抗生剤が奏功する細菌性の性感染症の発症率を6-9割抑えるというものです。ドキシペップのコラムは下記でご確認願います。

    最新のコラム

    5-5HIV, 性器ヘルペスはどのようにしての治るのか

    厳密に言えば、HIVの薬もヘルペスウイルスに対する薬も「完治を目指すもの」ではありません。HIVでは発症を遅らせたり、予防したり、ヘルペスであればウイルス量を減らす事などが目的で使用します。

    5-6できものの性病は「自然に」は治らない

    ヒトパピローマウイルス低リスク群はウイルス自体を排除しなくても、尖圭コンジローマのイボがなくなれば完治と言ってよいかもしれません。ただし、残念ながら再発される方もいらっしゃいます。伝染性軟属腫ウイルスによる水いぼも考え方は同じです。

    6まとめ

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